えんぶりは、毎年2月17日から20日の4日間開催される豊年満作を祈る八戸地方の代表的な民族芸能の一つで、国の重要無形民俗文化財に指定されています。
ここでは、えんぶりの歴史や演目の構成などについてご紹介します。
えんぶりの歴史
えんぶりの起源は伝説も含め様々な説があるが、全国に残されている「田遊び」「田植え踊り」といった民俗芸能の一種と言われています。
また、水田の土を平らにならすためのT字型の農具「朳」が名前の由来といわれており、それを使って稲の豊作を祈願する神事芸能であったといわてれいます。
その後、明治時代に入ると、門付けを伴うえんぶりがいかがわしい習慣であるとして禁止されましたが、当時の有力者・大沢多門によって長者山新羅神社の「豊年祭」という形で復活を遂げ、現在に至ります。
えんぶり組の構成
えんぶりは組単位で行われ、「親方」「太夫」「舞子」「お囃子」などの総勢20〜30人で構成されています。
「太夫」はえんぶりの主役の舞手のことで、馬の頭をかたどったという烏帽子を被って舞う「摺り」を行います。先頭に立つ太夫を藤九郎と呼びます。
「お囃子」は太鼓、笛、手平鉦、唄い手、太鼓持ちなどからなります。
えんぶりの種類
えんぶりには古くからの型である「ナガえんぶり」と新しい型である「ドウサイえんぶり」の2種類があり、えんぶり組によって舞う型が異なります。
ナガえんぶり
うたや仕草がゆっくりしており、優雅な舞が特徴で、えんぶりの中でも古い型と言われています。主役を務める太夫・藤九郎の烏帽子には、真っ赤な牡丹の花や白いウツギの花などがついており、藤九郎は鳴子、他の太夫は鍬台(田畑を耕す鍬の柄)を手にしています。藤九郎と他の太夫の舞の動きが異なることも特徴です。
ドウサイえんぶり
うたも仕草もテンポが速く、勇壮華麗なえんぶり。ジャンギという棒の先に金具のついたものを持ち、烏帽子に前髪という五色の房が付いているのが特徴です。
藤九郎と他の太夫の舞が異なる「ナガえんぶり」に対し、「ドウサイえんぶり」は太夫全員が同じ所作で摺るという違いがあります。
えんぶり摺りの演目・所作
えんぶりは、種まきから始まる稲作の様子を一つの物語として表現したものです。「ザイ」と呼ばれる指揮棒を持った音頭とりの合図で、田の神様への呼びかけの唄、お囃子、摺りが一斉に始まります。演目ごとに異なる多彩なお囃子がえんぶりの特長です。
※組により区切りや内容が異なります。
摺りこみ
えんぶりを始める口上を、太夫のリーダーである藤九郎が述べながら入場する導入部。
摺りはじめ
年の初めの祝い歌に始まり、苗代に種をまき、馬に田を耕させる田植え準備を表す摺り。
中の摺り
育った苗を田に植えることを表す摺り。
摺りおさめ
稲刈りを終え、俵を蔵に積むまでを表す摺り。宝物を手に入れ「諸国の宝を摺りよせた」と唄い、収穫のお祝いと豊作祈願をします。
畦留め
大事な田から水が漏れないように、呪文の言葉を唱える「畦留め」でえんぶりは終わります。
祝福芸
えんぶり摺りの合間に行われる、明るく楽しい祝福芸もえんぶりの魅力の一つ。子どもたちの愛らしい舞が観客を楽しませてくれます。
えんこえんこ
「金のなる木」といわれる小唄に合わせ、輪に銭が付いた銭太鼓を持って回しながら舞う演目です。
松の舞
農作業の休憩中、松の枝を持って踊ったのが始まりと言われる舞。主に子どもが演じます。
えびす舞
恵比寿さまが鯛を釣る様子を、子どもが釣竿と扇子を使って舞います。やっと釣り上げた鯛を、家内が豊かになるよう家の旦那様に捧げて終わる、おめでたい演目です。
大黒舞
子どもが右手に小槌、左手に扇を持ち、おめでたい口上や歌に合わせて舞う演目。