北のコナモンは
厳しい暮らしの中で
先人が生んだ知恵。

 「コナモン」とは小麦粉、米粉、とうもろこし粉など粉をベースにした食べ物の総称です。関西のお好み焼きや、たこ焼きのイメージが強いという方も多いと思いますが、八戸エリアでも古くから親しまれている料理です。古くからこの地方では、春から初夏にかけて太平洋沿岸に吹く冷たく湿った風「やませ」のもたらす冷害・凶作に悩まされてきました。そこで冷害に強い小麦や蕎麦、あわ・ひえなどの雑穀の栽培に力を入れ、それらを粉に挽いて食べていたことから北のコナモン文化が発達してきました。北のコナモン文化、そのルーツは厳しい自然環境から生まれた先人の知恵そのものだったのです。
 北のコナモンの代名詞といえば「南部せんべい」。いまなお県民に愛されるソウルフードで、お気に入りのせんべい店があるという方も多いです。もっともポピュラーな「白せんべい」をはじめ、ご当地グルメとして有名になった「八戸せんべい汁」には、煮込んでも煮崩れしにくい専用の「おつゆせんべい」、香ばしいゴマがたっぷり入った「ごませんべい」など種類も豊富。自分好みのせんべいを見つけてみるのも楽しいですよ。そのほかにも階上町の「早生そば」や三戸町の「かっけ(つつけ)」、「きんかもち」など、まだまだある北のコナモン。おすすめは「まちあるき」途中でテイクアウト。町の風土や文化の中で食べると、味もひとしおです。


階上早生そば

 青森県には在来系統から選別された品種のそば「階上早生」があり、古くは大正時代から愛されてきました。その特徴は豊かな風味と強い粘り。階上町では「地元で栽培」「全て手打ち」「地元で消費」にこだわり、栽培から料理まで一貫して手掛けています。
 このそばが注目を浴びたのは1913年(大正2年)。当時はヤマセ(冷たい北東からの風)の影響で多くの作物が育たず、凶作・飢饉に悩まされていました。しかしこのそばは寒さに強く、大凶作の中にあっても相当の収量が得られ、多くの人の命を繋いできたのです。その後、青森県農業試験場へ種子を取り寄せ、試験栽培し優れた成績であった為、1918年(大正7年)に「階上早生」と命名されました。


三戸せんべい

 青森県南部地方から岩手県で生産・販売されている「南部せんべい」。水で練った小麦粉を円形の型に入れて焼き、縁には「みみ」という薄い部分があります。三戸町では「三戸せんべい」が主流で、サクサクとした軽い食感が特徴です。一度食べるとやみつきになるほどで、おやつはもちろん、来客用のお茶菓子や贈答品としても親しまれています。スタンダードな「うすごませんべい」をはじめ、じゅね(えごま)やエビ、砂糖を使ったものなど、各店オリジナルのせんべいが味わえます。


ひっつみ・串もち

 「ひっつみ」は「すいとん」のようなものです。小麦粉を練った生地を薄くのばし、引っ張りながらちぎって煮込んでいきます。この生地を引きちぎる行為が「ひっつみ」の名前の由来だと言われています。野菜の入った醤油ベースのダシ汁に様々な具材が入った、栄養たっぷりの郷土料理です。
 「串もち」は、小麦粉や米粉を練って平らにした丸もちを串に刺して焼いたものです。晴れの日の行事食、おやつとしても人気のソウルフードです。炭火で焼いた香ばしいじゅね(えごま)味噌が旨さを引き立てます。


川蟹すいとん

 川蟹を1匹ずつ丁寧に下ごしらえし、殻ごと身も甲羅もすべて叩いてダシをとっています。叩けば叩くほど川蟹ならではの味わいが深くなります。地元の南部小麦を使った「すいとん(ひっつみ)」は厚みがあり、濃厚なスープとよく合います。昔から川蟹が採れたときは、夕ごはんのしめに振る舞われていました。その後川蟹が採れずメニューからなくなりましたが、15年ほどの歳月を経て、現在は人気の一品として復活しています。テレビなどのメディアでも紹介されるほどの逸品をぜひご賞味ください。


つつけ

 小麦粉やそば粉で作った三角形の生地を茹でて、ネギ味噌やニンニク味噌をつけて食べる郷土料理です。ネギや大根、豆腐などと一緒に煮込んで食べます。「つつけ」のおいしさのポイントは、そば粉や小麦粉に熱湯を加え、耳たぶくらいの固さにこねることです。このひと手間で粘りと弾力を出しています。ダシを入れた鍋にくっつかないように1枚ずつ混ぜながら入れていき、浮き上がったらネギ味噌などをつけて食べます。そば粉で作ったものを「そばつつけ」、小麦粉で作ったものを「むぎつつけ」と呼びます。


きんかもち

 もちにした小麦粉にクルミ味噌を入れてゆであげたものです。三戸地方はヤマセの影響で農作物の栽培に苦労してきたため、稲作の他に小麦の栽培も行ってきました。その小麦粉ですいとん(ひっつみ)、もちなどを作ります。中でも変わり種である「きんかもち」はおやつとしても作られますが、昔から盆の16日に仏壇に上げ仏様を供養する習慣があったと言います。歯ごたえのあるクルミと、溢れ出すとろりとした黒砂糖のあんがたまりません。モチモチとした生地と甘じょっぱい風味が醸し出す昔ながらの味を楽しむことができます。

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