八戸の横丁をハシゴ酒。
8つの横丁を一晩で何軒まわれるかチャレンジ!

東北有数の「横丁文化」が根付くまち、青森県八戸市。中心街には、8つの横丁が張り巡らされ、昔ながらの老舗から、オープンしたばかりの新店まで、新旧さまざまなジャンルのお店が集まります。今回は、『はちのへ横丁ダンジョン』マップを片手に横丁でハシゴ酒に挑戦してみました。

そもそも横丁とは?

まずは「横丁」の意味をおさらい。横丁とは、メインとなる通りから少し入った細い道のこと。「横町」と書くこともあります。読み方は「よこちょう」。「商店街」はさまざまな業種の店舗が並びますが、「横丁」には小さな飲食店が密集しているイメージです。

言い換えとして「路地」や「路地裏」がありますが、「路地」は表通りではない小さな道で、住宅街などにも使われます。「路地裏」は道だけでなく空間全体のことを指します。

横丁は全国にありますが、例えば東京都内で有名なのは「新宿ゴールデン街」や吉祥寺の「ハーモニカ横丁」、浅草の「ホッピー通り」など。千円でべろべろになるまで酔える「せんべろ」酒場や、サクッと飲める立ち飲み屋なども近年ブームになりました。

八戸にも横丁文化が根付いており、8つの横丁が張り巡らされています。一軒で腰を据えて飲むというよりも、ハシゴ酒を楽しむのが基本です。

八戸中心街の横丁へのアクセス

新幹線の発着駅である「八戸駅」から、8つの横丁がある中心街へのアクセスは、以下のような方法があります。

  • 電車……JR八戸線「本八戸駅」まで約8分、徒歩12分
  • バス……八戸市営バス、南部バスで「中心街方面」のバスへ乗車、約25分。「十三日町」「三日町」「八日町」のいずれかで下車
  • タクシー……約15分

『はちのへ横丁ダンジョン』マップが登場!

2022年12月、東北新幹線八戸開業20周年を記念し、八戸横丁連合協議会とVISITはちのへが『はちのへ横丁ダンジョン』マップを製作。

昭和レトロなゲームを思わせるドット絵で、横丁のマップが描かれています。細かなお店までは記載されていませんが、各横丁のおおまかな位置を把握できるほか、通り抜けられるビルや、抜け道も描かれているのが便利!

その裏面には、【みろく横丁】【花小路】【ロー丁れんさ街】【長横町れんさ街】【たぬき小路】【五番街】【ハーモニカ横町】【八戸昭和通り】と、8つの横丁の特徴も書かれています。これを見てから、どの横丁に行くか決めるのも手です。

今回のマイルール

8つの横丁をハシゴ酒する企画ということで、酒好きの私にとっては天国のような取材なのですが、仕事なのでべろべろに酔っ払わないようにしなければいけません。また、横丁の魅力を伝えるためにも以下のマイルールを課すことにしました(エライ!)。

  • 営業中のお店のなかから、気になったところに突撃して取材許可をとる
  • 横丁自体はすべて巡る(お店はすべての横丁を網羅できなくてもよし)
  • できるだけ多ジャンルの店を巡る
  • 各店でお酒を一杯は頼む
  • 食事のあるお店で一品は注文する
  • お酒の種類もできるだけ多ジャンルを飲む

17:00 【みろく横丁】からスタート!

八戸の横丁は一人飲みももちろんOKなのですが、行ったことのないディープなエリアもあったので、VISITはちのへの職員に同行してもらうことに。17時に待ち合わせて、みろく横丁から食べ歩きスタートです。

みろく横丁の正式名称は「八戸屋台村 みろく横丁」。三日町と六日町をつなぐような立地のため、「みろく」と名付けられたそう。新幹線八戸の開業の際に生まれた、8つのなかではもっとも若い横丁で、今年20歳。3年ごとに店の入れ替えがあることからも、若くて元気な印象です。

横丁の真ん中くらいにあった店舗配置図。花小路を挟んで、三日町側と六日町側に分かれています。「新」のマークがあるところは比較的新しい店舗。
※2024年4月20日に第七期リニューアルオープンし13店舗が入れ替わりました。詳しくはみろく横丁のホームページをご確認ください。

横丁全体をバリアフリー化していることや、立地の便利さからも、横丁初心者や観光客にも人気のストリート。基本的には18時頃からの営業が多いですが、お昼に定食を出すお店もあります。

17:10 【みろく横丁】の〈ととや 烏賊煎〉でイカを食べる/1軒目

※ととや 烏賊煎は2024年5月に八戸市六日町に移転しました。

17時台、みろく横丁で明かりのともっているお店はまだちらほら。ふとスマホアプリの天気予報を見たら気温1℃でした。

この日は0℃まで下がるそう。ダウンジャケット着てきてよかった〜!

みろく横丁の三日町側の入り口付近にある、〈ととや 烏賊煎〉がやっていたので、さっそく入店しました。八戸はイカの産地として有名なので、イカのメニューを注文したい!

店内には短冊メニューの並ぶカウンターと、アクリル板で区切られたテーブル席がある。

〈ととや 烏賊煎〉は、入れ替わりの激しいみろく横丁のなかでは古株で、2011年オープン。三日町の大通りに面して大きな生け簀があり、イカが水揚げされた日はここで元気に泳ぐ姿を外からでも見られます。さっきまで泳いでいたイカを活造りにできるとあって人気なのですが、この日は残念ながら泳いでいませんでした。

最初の一杯はやっぱりビールでしょ。
乾杯〜〜〜!

メニューは「いかそーめん」1,100円、「いか塩辛」660円、「いかしんじょう焼き」1,100円などイカを使ったものから、刺身、郷土料理、肉料理、焼き物、サラダ、雑炊やお茶漬けなどのご飯ものまで。その日のおすすめは短冊メニューに書かれています。

この日のおすすめとして、宮城県から入荷したという「モウカの星刺」がありました。サメの心臓なんだとか……! 店員さんに「レバ刺しと馬刺しのちょうど間くらい」と言われ、気になったので注文することに。

そのほかには、やっぱりイカを食べたいので「イカ刺」と、「いかゴロ焼き(いかのふとピリ辛ダレで)」を。

左から時計まわりに、「イカ刺」880円、「いかゴロ焼き(いかのふとピリ辛ダレで)」1,100円、「モウカの星刺」1,320円。

まずは「イカ刺」から。部位によって変わる、ねっとり、コリコリなどの食感を楽しめます。

気になっていた「モウカの星刺」は、たしかに「レバ刺しと馬刺しのちょうど間くらい」でした。もうレバ刺しは食べられないので、貴重……。ショウガやニンニク、小ネギなどの薬味をのせ、ごま油と塩につけて食べます。

「いかゴロ焼き」は、イカの腑(内蔵)を「ゴロ」と呼ぶことに由来する、八戸の郷土料理。腑ごと使うため、余すことなく食べられます。腑の旨みが染み出した甘辛いタレが濃厚で、白米を入れて食べたら絶対においしいだろうなと思ったのですが、このあともお店も巡るので、白米を入れずにタレを飲み干しました(さっそく塩分とりすぎ)。

18:00 【花小路】をうろうろ

みろく横丁のちょうど真ん中を割るようにして、横に走る「花小路」。昭和40年代、三日町と六日町の中間に設けられた防災上の空閑地としての役目があったため、ビルとビルの間に形成された横丁です。昭和62(1987)年、「花の咲き誇る小路であるように」との願いを込めて「花小路」と名付けられたそうです。

まだオープンしているお店はなさそうだったので、いったん飛ばして、れんさ街方面へ向かいます。

18:05 【ロー丁れんさ街】へ

みろく横丁の六日町側から、ゆりの木通り方面に抜ける鷹匠小路は、藩政時代に牢屋があったことから、「ロー丁(ろーちょう)」とも呼ばれています。そのロー丁と長横町れんさ街をつなぐような位置にあるため、「口一丁れんさ街」と呼ばれるようになったのだとか。

飲食店の並ぶ対面は駐車場になっていて、建物が密集していないため開放的な印象です。
2001年に閉館するまで、映画館〈テアトル八戸〉がありましたが、現在は〈​​タイムズテアトル駐車場〉としてその名が残っています。

18:10 【ロー丁れんさ街】の〈おかげさん〉で名物姉妹に会う/2軒目

「たしか、同級生のお母さんが働いているお店がこのあたりって聞いたな」という記憶を頼りに入店したのが、〈おかげさん〉。

姉妹だというママさんふたりが迎えてくれました。
通していただいたのが、なんとコタツ席! 寒かったので嬉しい〜!

「このご時世なので申し訳ないんだけど」と紙を渡され、名前と住所を紙に書きました(入店拒否とかではないよ)。

飲み物のメニュー表を見ると、右下に、明らかにあとから書き足された「ブラジャーあります。」の文字が。

え、気になりすぎる。「ブラジャーってなんですか?」と聞くと、ブランデーをジンジャーエールで割った飲み物なんだそう。おいしそうだったので、同行者と一緒に注文。

「ブラジャーふたつ!」
「60代と70代のブラジャーで〜す」

という掛け合いに、思わず噴き出してしまいました。

この飲み物が「ブラジャー」。
ブランデーはあまり馴染みのないお酒だったのですが、ブランデーのコクとジンジャーエールの甘みが合っておいしかったです(すっかりハマッてしまい、家飲み用にブランデーを買ってしまった)!

ちなみに、ドリンクの値段が書いていないのですが、「ブラジャー」は880円。「ブランデーだからちょっと高いのよね」とのこと。生ビールは630円と、良心的な価格設定なのでご安心を。

昔はメニューの裏に「裏メニュー」として「せんべいピザ」もあったそう。今はブログ記事などを読んだお客さんから普通に注文されるため「裏」メニューではないようです。「白せんべい」と、やわらかくもちもちした「てんぽせんべい」を使っていて、「うちがせんべいピザの発祥なのよ」とママ。

カウンター横に掛けられたメニュー表を下ろして見せてくれました。こちらはフードメニュー。ホッケやカラスガレイなどの焼き魚から、ブリやタコ白子などの刺身、揚げ物に、いわゆる居酒屋メニューなどが並びます。

おすすめを聞いて注文したのが「トロトロとうふステーキ」880円。

温かいうちにスプーンでよくかき混ぜて食べるそうで、見本を見せてくれました。

鉄板の上に、キツネ色の焼き色がついたふわふわのものがのっています……!
この「トロトロとうふステーキ」は長いもと豆腐、チーズ、卵、ダシで作られているそう。まずはそのままひと口。そのあとは黒コショーやタバスコで“味変”しながら楽しみます。

走り書きしたメモを見返したら、「トロトロふわふわであつあつ」とありました。ライターなのに擬音しか浮かばなかった……。めちゃくちゃおいしかったんです……。

そしてもう一品、「自家製青なんばんソースピザ」1,150円を頼んでみました。

「手でつかもうとするとくずれちゃうから、箸でとるといい」と指南を受ける。

薄い生地に青なんばんソースとチーズがたっぷり。甘じょっぱくて辛い感じがやみつきになりそう。

それぞれボリュームがあり、2軒目にしてだいぶ満腹になってしまいました。もっと食べたいメニューはあったのですが、お会計させてもらうことに。

「うちにはおすすめがいっぱいあるのよ〜。揚げ出し豆腐なんて、『これが揚げ出し豆腐!?』って感じだし、厚焼きタマゴもイカゴロ鉄板焼きもおいしいんだから。一品一品の量が多いから、いっぱい来て、いっぱい食べて」とのこと。

おふたりは姉妹。「叶姉妹じゃなくて不可能姉妹よ」と言っていた。キメゼリフなんだろうな。
「また来ます!」と言うと、「じゃ、また来週ということで!」と送り出してくれました。また絶対行きたい。

19:35 【長横町れんさ街】へ

ロー丁れんさ街から長横町へと抜ける「長横町れんさ街」は、昭和20年代後半から続く飲食店街。鎖をつなぐようにして飲食店が並んだことから「長横町れんさ街」と呼ばれるようになったようです。二股に分かれたU字型になっていて、老舗バーからエスニックにカレー、ラーメン店などが立ち並ぶ様子に、どこか異世界に迷い込んだような感覚になります。

藩政時代には家老の屋敷があり、戦後は仕立屋なども集まる商店街だったそう。

19:37 【長横町れんさ街】の〈プリンス〉で八戸の名所カクテルを飲む/3軒目

2軒を巡ってすでに満腹になってしまったので、食事はいったん休憩……ということで、〈洋酒喫茶 プリンス〉へ。

ビビッドカラーの看板と店構えから、初めてだと「一見さんお断りかな?」などとためらってしまうのですが、派手なシャツを着たマスターがあたたかく迎えてくれるのでご安心を。

昭和32(1957)年にオープンした〈プリンス〉は、長横町れんさ街のなかでも歴史の長い老舗バー。ノーチャージでカクテル一杯500円と、明朗会計なのも安心です(ビールやシングルモルトウイスキーなど、一部除外あり)。

天井いっぱいの名刺が迫力満点の店内。

こちらでは「蕪島」「白浜」「種差」などの八戸の名所、「えんぶり」「三社大祭」などのお祭りをイメージしたカクテルを提供しています。

今回は、20年前から提供しているという「種差」を注文しました。

日本酒とジン、グリーンティーリキュールで種差の天然芝を再現した「種差」。右にあるのはお通しとして提供されるスナック「こざかなくん」とチョコレート。

グリーンティーの風味と甘みのおかげでグビグビ飲めてしまいそうなのですが、実はアルコール度数が高いキケンな飲み物。チビチビ飲むことにします。

国の重要無形民俗文化財にも指定された八戸三社大祭の山車をイメージした「神社エール(高欄山車)」。

同行者が注文したのは、300年の歴史を持つ夏のお祭りである「八戸三社大祭」の山車(だし)から着想を得た「神社エール」の「高欄山車」。三社大祭はおがみ神社、長者山新羅神社、神明宮の神社の合同のお祭りなので、神社を応援する意味も込めて「神社エール」と名付けられました。注文1杯につき100円を八戸三社大祭の山車振興会に寄付しているそう。

山車は4つの類型があり、それぞれをイメージしてカクテルにしてあります。

筆者が以前お店へ行ったときに撮影したもの。左から、海を舞台とした「波山車」、大きな門や城を取り入れた「建物山車」、滝や松などが配された黒い岩山の「岩山車」、赤い欄干で四方を囲んだ「高欄山車」をイメージ。

どんなリキュールやシロップを組み合わせているのかをマスターに聞いたので、これから行く人はぜひ参考にされたし。

  • 波山車……ジンベース×ブルーキュラソー
  • 建物山車……ジンベース×ブルーキュラソー×メロンシロップ
  • 岩山車……ジンベース×メロンシロップ
  • 高欄山車……ジンベース×グレナデンシロップ
ペパーミントがたっっぷり入ったモヒートも人気。

現在メインでお店に立つのはマスターと息子さん。実はふたりとも、一滴もお酒が飲めない下戸……。どうやって新しいカクテルを作っているのかというと、お客さんに飲んでもらいながら完成させるのだといいます(もちろん口に含んでみて「こんなもんか」と味見はするそうですが)。

「ぼくらはもぐりみたいなもんですから、お客さんに甘くしろとかアルコールを強くしろとか言われたらそのまま対応します」と、マスター。

こちらも別日に撮影させてもらっていた、マスターの佐々木良蔵さん。「カクテルはなんとかなるけど、ほら、変なニオイのウイスキーとかあるでしょ?」とか言っていて、本当にお酒が苦手なご様子で笑ってしまった。

「もぐり」(本人談)で、こんなに長く愛されているのがすごいなぁ、とあらためて感心しつつ店をあとにしました。

20:20 【ハーモニカ横町】へ

続いてはハーモニカ横町へやってきました。他の横丁と比べても、賑やかな通りに面しているのではなく、ビルに挟まれていることもあり、実は筆者にとって未開の地。

もともとは「やきとり横丁」と呼ばれており、昭和45年頃に「楢館11番街」となりました。現在の「ハーモニカ横町」の名は、楽器のハーモニカの吹き口のように店舗が並んでいたことに由来しています。

20:30 【ハーモニカ横町】の〈アジア酒場 チャクラ〉でスパイス料理を食べる/4軒目

哀愁漂うハーモニカ横町に、カラフルな外観のお店を発見。ポップな印象ながら、店の中が見えないのでドキドキ……。同行者はこちらへ訪店したことがあり、エスニック料理がおいしいとのことだったので、入ってみます。

カウンターと小上がりの座敷があります。座布団カバーはネパールでオーダーメイドしたものだそう。

小上がり席に通していただきました。

ドリンクは生ビール600円、ウォッカサワー各種450円、中国酒、ハイボール、焼酎、ワイン、カクテルなど多ジャンルがありました。そのなかで気になったのは、「ククリラム」というネパールのラム酒。

「ククリラム(ソーダ割り)」600円。ロック、水割りも可。

甘みのないすっきりとした味わいなのですが、ほのかに甘い香りがあり、コクも感じられます。

フードメニューは、アジアのエスニック料理をメインに、「そぼろレタス包み」650円、「スパイスチキン」650円、「ネパールハンバーグ」700円、「青菜炒め」600円、「トムヤムとうふ」700円、「タイガパオ丼」750円など、600〜700円台を多く取り揃えている印象。手頃でよき!

食べてみたいものばかりだったのですが、悲しいことにお腹がいっぱいなので、「生春巻」と「タイカレー(ハーフ)」を頼むことにしました。

「生春巻」750円。

エビや鶏肉、水菜などの野菜が入った「生春巻」は、ナンプラーの香りがするソースにつけて食べました。スイートチリソースではなく、酸味のあるソース。野菜がいっぱいだから罪悪感なく食べられてしまう……。

「タイカレー(ハーフ)」250円。

ハーフサイズとはいえ250円で食べられるのがうれしい「タイカレー」。たけのこや鶏そぼろなどがスパイスと煮込まれていました。

同行者が注文した「ネパールマサラミルクティー」700円。ティーポットにたっぷり。

比較的新しいお店なのかなと思っていたら、なんとオープンから27年目だという〈チャクラ〉。ママはもともと東京でアパレル系の仕事をしていたそうですが、アジア旅行好き、料理好きが高じて、Uターンしてお店を出しました。

ママさん。

「東京から帰ってきて『一人でお店をやりたい』って不動産屋を訪ねたら、『いいところがある』って紹介された物件がここだったんです。当時、ハーモニカ横町では70代くらいのお母さんたちがやっている小料理屋が多かったんだけど、みなさん徐々に引退されて、いつのまにかうちが古株になっていました」

今では、ちょっと迷惑な酔っ払い客がきたときに、他店の若いママから頼られることもあるそうです(とはいえ、ここを目指さない限り、ふらっと立ち寄れるわけではない立地のため、変なお客さんはあまりこないとのこと)。

ママの独特なテンポの話がおもしろくて、初めて訪れたのにすごく好きになってしまいました。

カウンターや小上がり席にあるウェーブは、ヒマラヤ山脈。実際のシルエットを大工さんに見せて造作してもらったそう。「このへんがエベレスト」などと教えてくれます。

ちなみに、長横町れんさ街の〈ポカラ〉とは姉妹店で、ナンやカレー、タンドール料理などを出前してもらうこともできるそうですよ。

食べてみたいメニューがたくさんあった&ママのファンになったので、再訪を誓ってお店をあとにしました。

21:20 【八戸昭和通り】へ

ハーモニカ横町から駐車場を抜けて、八戸昭和通りへ出ました。ここは、もともと愛称のなかった飲食店街。平成14(2002)年の東北新幹線八戸開業にあたり、「昭和のぬくもりが感じられるように」との想いを込めて「八戸昭和通り」と名付けられました。

写真の手前に看板が見えている〈大満〉は“〆焼肉”で人気の焼肉店。ここでシメよう! と思ったのですが、この日は営業していなかったぁぁぁ……! そこで、まだ巡っていない横丁へ行ってみることに。

21:22 【五番街】へ

八戸昭和通りから長横町に出て、ビルと駐車場の間にある抜け道を入ると、そこが五番街。アメリカ映画『五番街の出来事』に由来して名付けられた、昭和30年代後半から続く飲食店街です。奥へ進むにつれ、小さな建物がひしめいて、人がひとり通れるくらいの細い道です。

21:25 【たぬき小路】へ

五番街を抜けると、たぬき小路に。札幌の狸小路のようなにぎわいを目指し、昭和20年代前半から「たぬき小路」と呼ばれるようになったそう。吉永小百合さんが出演する『JR大人の休日倶楽部・八戸横丁篇』のロケ地にもなりました。

ワインでも飲めたらいいなと思ったのですが、お目当ての店がお客さんでいっぱいだったので、しばしうろうろしてから、〆にラーメンを食べようということになりました。

21:35 【花小路】の〈小松笑店〉で長浜ラーメンを食べる/5軒目

みろく横丁の真ん中を横に走る、花小路へ戻ってきました。ほんのりと豚骨スープの香りが漂ってきます。

花小路ビルの1階にあるのは、長浜ラーメンを提供する〈小松笑店〉。「長浜ラーメン」とは、福岡の博多漁港に面する、長浜で生まれたラーメンのこと。

〈小松笑店〉店主の小松義昭さんは、前職でトラックの運転手をしており、長浜で荷下ろしする際に食べたラーメンに感銘を受けて、弟子入りさせてもらうことに。無給で住み込み、3年間修行したそうです。

その後Uターンし、ビルの階段下にあった3坪のスペースに、カウンターのみのラーメン店をオープンしました。今年で26年目になったといいます。

屋台のなかを覗くと、カウンターとテーブル席がありました。

「この階段下は、もともと小さな花屋さんがあった場所。雨風をしのげるし、ひとりでやるのにちょうどいいかなと思って。お金がなかったので、全部ひとりでつくりました」

と、小松さん。今でいうDIYで、いちからお店づくりをしたといいます。

カウンターのみの店から、少しずつ店舗を横に伸ばしていき、新型コロナウイルスの流行前までは、向かいのテナントにも座席をつくっていましたが、現在は縮小。

この日は、ビール→ブランデー→日本酒&ジン→ラムときたので、〆にサワーをいただきます!

さて、メニューはというと、「らーめん」細麺850円、太麺900円、「とんこつ味噌」(太麺のみ)900円〜、「半らーめん」細麺700円、太麺750円など。トッピングは味付き玉子やもやし、高菜、ねぎ、明太子、チャーシューなどが100円〜。

お腹いっぱいになっているので、半らーめんで〆!

「半らーめん」(細麺)と、ねぎトッピングで800円。

白濁した豚骨スープに細麺が特徴の長浜ラーメン。「半らーめん」にねぎのトッピングをしました。うつわが小ぶりでかわいい。〆ラーメンにはちょうどいい大きさです。

ちなみに、「らーめん」はこんな感じ(同行者が注文していたのを撮らせてもらいました)。

コロナ禍以降、アルバイトも入れずひとりで営業していたそうですが、「今週末からバイトさんに入ってもらうことにしたんです」と、小松さん。ちょっとずつ八戸にも活気が戻りつつあるようです。

あんなにお腹いっぱいだったのに、しっかりスープまで飲み干して、帰路につきました。

八戸の横丁で、ハシゴ酒を楽しもう!

今回巡ったルートはこんな感じ。

紫色のルートで巡りました。

17時のスタートから22時までの5時間で、8つの横丁内にある5軒のお店を巡ることができました。

あらためて横丁を巡ってみると、それぞれに特徴があり、料理もお酒もジャンルがさまざま。八戸の横丁文化は、個性的で小さな飲食店によって支えられていると実感しました。

『はちのへ横丁ダンジョン』マップは、JR東日本八戸駅の構内にある〈はちのへ観光案内所〉や、八戸中心街の〈八戸ポータルミュージアム はっち〉などで配布予定。

ぜひゲットして、年末年始は横丁をハシゴ酒してみてください!

※お店の情報は取材時点のものです。値段などは目安として入れていますが、直接お店で確認してください。

| Written by  栗本千尋 Chihiro Kurimoto

1986年生まれ。青森県八戸市出身・在住(だけど実家は仙台に引っ越しました)。3人兄弟の真ん中、2人の男児の母。旅行会社、編集プロダクション、映像制作会社の営業事務を経て2011年に独立し、フリーライター/エディターに。2020年8月に地元・八戸へUターン。八戸中心商店街の情報発信サイト『はちまち』編集長に就任。主な執筆媒体は、講談社『FRaU』、マガジンハウス『BRUTUS』『Hanako』『コロカル』、Yahoo!『Yahoo! SDGs』etc…

Twitter:@chihirokurimoto note:@chihirokurimoto

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