2013年10月に運行を開始した『TOHOKU EMOTION』が、ついに10周年! 人気シェフが手がけるコース料理を味わいながら、車窓からは八戸から久慈までの海岸沿いの風光明媚な景色を眺めることができます。『TOHOKU EMOTION』で、のんびり日帰りの旅へ出かけてみませんか?。
『TOHOKU EMOTION』って?
『TOHOKU EMOTION』は、八戸駅と久慈駅を結ぶレストラン列車。往路は八戸駅ー久慈駅、復路は久慈駅ー八戸駅の運行となります。
往路はJR八戸線八戸駅を11:06に出発し、13:02に久慈駅着。復路は14:18に久慈駅発、16:01八戸駅着と、往復それぞれ約2時間ずつの列車旅になります(※2023年9月19日時点の情報です。変更になる場合があります)。
こちらは旅行商品として販売されており、2名~4名での申し込みが可能。JR東日本びゅうツーリズム&セールスの「のってたのしい列車予約サイト」から予約後、乗車日にスマートフォン等で乗車証を提示して利用することができます。
『TOHOKU EMOTION』の最大の特徴は、なんといっても三陸の美しい海岸線と、東北の美食を同時に楽しめること。
往路では、「食のサーカス」というキーワードをもとに人気シェフが考案した、東北の食材を使ったランチコースを提供。東北にゆかりのあるシェフが監修し、メニューは3か月ごと、年4回替わる構成なので、繰り返し乗車しても新鮮な内容になっています。
復路では、〈ホテルメトロポリタン盛岡〉監修によるオーダーブッフェ形式でのアフタヌーンティーを味わえます。往復ともにアルコールを含むドリンクもフリーフローなので、食事とのペアリングもOKです。
もちろん、往路のみ、復路のみの片道利用も可能です。
列車の中身を大公開!
JR八戸駅での乗車方法はというと、在来線の改札口で、予約内容確認画面の乗車証をスマートフォンで提示、もしくは印刷した「乗車証(控)」を提示します。
ホームに降りると、すでに『TOHOKU EMOTION』が待っていました。
「走るレストラン」をイメージした白いレンガ調で、手描きのようなラフさもあり、堅苦しすぎない印象を受けます。2023年4月から約1年間は、10周年ロゴのヘッドマークをつけて運行しているので、ぜひチェックを。
さて、列車の中身を見ていきましょう。インテリアデザインは、〈amadana〉のデザイン家電や〈HOTEL CLASKA〉などを手がけた建築家・デザイナーの鄭秀和氏が担当しています。
1号車は「コンパートメント個室車両」。7室のプライベート空間となっていて、最大4名まで利用できます。各車両には東北地方の工芸品をモチーフとしたインテリアがちりばめられていて、1号車の壁面ファブリックは福島県の「刺子織」がモチーフ。
2号車は「ライブキッチンスペース車両」。こちらで仕上げを行うため、調理される様子を目の前で楽しめます。キッチンの背面は青森県の「こぎん刺し」、カウンターは岩手県の「南部鉄器」、青森県の「南部姫毬」がモチーフになっています。
3号車は広々とした「オープンダイニング車両」。床は青森県の「こぎん刺し」、照明は岩手県の「琥珀」、什器の仕上げ材は宮城県の「雄勝硯」をモチーフにしています。
今回、往路では1号車の「コンパートメント個室車両」に乗車しました。
いざ出発。車窓からの景色は?
JR八戸駅から出発すると、まずはウェルカムドリンク、ノンアルコールのスパークリングアップルで乾杯。2杯目以降はメニューのなかから好きなものを選んで注文できます。「往復で予約したのに、往路で飲みすぎてしまい、復路は寝てしまった」という失敗談もあらかじめ聞いていたので、飲みすぎないように注意しながらのスタートです(笑)。
乗車日は田植えの時期だったので、美しい田園風景が広がっていました。
本八戸駅や陸奥湊駅のエリアを過ぎると、蕪島や鮫角灯台、葦毛崎展望台、種差天然芝生地などの景勝地を通ります。このあたりでは列車が速度を落として走行し、その場所についてのアナウンスも。食事と外の景観をどちらも堪能できます。
当日はあいにくの曇り空でしたが、鬱蒼とした林に霧がかかるさまは幻想的でした。その時期によって見られる景観が変わるのも『TOHOKU EMOTION』の醍醐味。
地元有志による「洋野エモーション」。
海岸線を走っていくと、岩手県洋野町にある宿戸大浜で色とりどりの大漁旗が振られています。「洋野エモーション」と呼ばれる活動なんだとか。
有家海岸でも出迎えてくれました。
これらは依頼してやってもらっている活動かと思いきや、あくまでも地元の有志が自発的に行っていることなのだそうです。
取材に対応してくれた東日本旅客鉄道盛岡支社の青森営業統括センターの宮川未来さんは、こう話します。
「2011年の東日本大震災により通常の列車運行ができなくなった時期があり、地元のお客様にはご不便をおかけしてしまいました。
『TOHOKU EMOTION』は、震災復興の一助となればという思いから2013年10月に運行開始しましたが、はたして地元のみなさんに受け入れてもらえるだろうか、という不安がありました。
そんななか、地元の方々が『TOHOKU EMOTION』の乗客に向かって大漁旗や手を振って歓迎する気持ちを表現してくださったんです。あたたかく受け入れていただけたことに感謝と心強さを感じました。それ以降も、自発的に集まった地域の皆さまが、率先して活動してくださっている。ひとりのときもありますが、そういう気持ちがうれしいですよね。
地域の足として、八戸線を守っていくという使命感を持っているので、多くのお客さまに八戸線をご利用いただけるよう、地域の皆さまと一緒に盛り上げていきたいです」
往復乗車するなら久慈でどう過ごす?
さて、往復で予約した場合、久慈駅に到着すると、1時間強の空き時間ができます。そこで久慈駅周辺を散策してみました。
久慈駅を出て左手側には〈情報交流センターYOMUNOSU〉がありました。観光案内所と図書館の複合施設で、1階の観光交流センターにはNHKの連続テレビ小説『あまちゃん』で実際に使われた衣装やイラストなどが展示されています。
2〜3階には図書館、4階には屋上広場、5階には展望室があるようなので、ここで時間をつぶすのもいいかもしれません。
久慈駅から徒歩約7分のところに、〈道の駅くじ やませ土風館〉があることがわかり、そちらに向かって歩いてみることにしました。
〈道の駅くじ やませ土風館〉は、物産館のある〈土の館〉と観光交流センターのある〈風の館〉、その建物の向かいに広がる飲食店街〈歴通路(れとろ)広場〉などの複合施設。
〈土の館〉の物産館には、海の幸から、地酒、地元菓子店の箱菓子みやげ、久慈琥珀のプロダクトまで、さまざまな特産品を扱っていて、おみやげ探しには最適でした。
おみやげ探しをしていたらあっという間に時間が過ぎてしまうので、駅へと戻ります。 JR久慈駅の隣、三陸鉄道の構内にある〈三陸リアス亭〉では、『あまちゃん』の主人公が販売していた駅弁のモデルになった「うに弁当」も売っていました。一度は食べてみたいのですが、ランチコースでたらふく食べたあとだったので、今回は泣く泣く断念……。いつかリベンジしたい。
久慈駅からの復路はデザートブッフェ
復路の列車に乗車するため、出発時間までにJR久慈駅へ。こちらも改札口で乗車証を提示すればOKです。
往復で座席を変えてみたかったので、復路では「オープンダイニング車両」になっている3号車を予約しました。
出発後、まず運ばれてきたのは『TOHOKU EMOTION』のロゴがあしらわれたデザートのアソートプレート。ドリンクメニューにはノンアルコールのみ記載されていましたが、一部のアルコール類の提供も可能とのこと。
その後はオーダーブッフェスタイルで、デザートやオードブルなどを好きなだけ。車窓からの景色を楽しみながら、甘いひととき。
往復で予約する場合は、往路のランチコースでお腹いっぱいになってしまう可能性が高いので、食べられる量をちょっとずつ頼むのがいいと思います。撮影用にたくさん注文したら食べきるのが大変でした(笑)。
復路は、種差海岸駅、鮫駅、本八戸駅でも降車可能(途中駅で降車した場合、乗車証は前途無効)なので、最寄り駅で降りると便利です。
『TOHOKU EMOTION』でおいしい旅を!
三陸の海岸沿いを楽しめる日帰り旅を満喫しました。夏はなかなか予約がとれないそうですが、冬が狙い目。雪景色もきっと美しいんでしょうね……。
※使用している写真は、令和5年6月12日現在のものです。
| Written by 栗本千尋 Chihiro Kurimoto
1986年生まれ。青森県八戸市出身・在住(だけど実家は仙台に引っ越しました)。3人兄弟の真ん中、3人の男児の母。旅行会社、編集プロダクション、映像制作会社の営業事務を経て2011年に独立し、フリーライター/エディターに。2020年8月に地元・八戸へUターン。八戸中心商店街の情報発信サイト『はちまち』編集長に就任。主な執筆媒体は、講談社『FRaU』、マガジンハウス『BRUTUS』『Hanako』『コロカル』、Yahoo!『Yahoo! JAPAN SDGs』etc…
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