東北地方の太平洋側は、冬の寒さに加え、春から夏にかけ吹く、冷たく湿った風ヤマセによる冷害に悩まされてきました。稲や木綿が育たず苦労した地域ですが、だからこそ生まれた独特の景観や、暮らしの知恵があります。
①景観
中須賀のお花畑
鮫角から中須賀付近にかけては、海岸の斜面を中心に海岸草原が形成されています。古くは馬用の採草地で、現在も初夏にはニッコウキスゲやノハナショウブなど、650種を超える海浜植物や、高山植物の花畑が広がります。海岸沿いであるのにこうした植生をもつのは、夏の冷たいヤマセや冬の少雪などの独特の気候の影響。特に「中須賀」は多種多様な草花が咲き誇る景勝地の一つとなっています。なかでも種差の固有種である「ハチノヘトウヒレン」などは、ここでしか見られません。
淀の松原
木々の間から海を望める「淀の松原」は、魚付林(うおつきりん)として植樹されたものです。樹齢100年以上で、3kmに渡り松原が続きます。クロマツは塩害に強く、魚群誘致や漁場保全の目的もあったとされています。大昔に、ここからの眺めが気に入って住み着いた者がいたという「仙人窟」や、コウモリが生息していた「コウモリ穴」、岩手県宮古市までつながっていると言い伝えのある「地獄穴」など、ディープな見どころがあるのも魅力です。
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②食
階上早生そば
米が育ちにくかった階上町では、痩せた土地でも育つ蕎麦が栽培されてきました。中でも「階上早生」は、寒さに強い在来品種。黒褐色で大粒の実をつけ、強いコシと香りある蕎麦を味わうことができます。
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③芸能・手仕事
えんぶり
「えんぶり」は、豊作を祈願する郷土芸能。凶作に悩まされて来たからこそ発展してきたと言われています。冬の間眠っている田の神をゆさぶり起こし、田に魂を込める、春を呼ぶお祭りで、烏帽子(えぼし)をかぶる太夫が、農具をもち、種まきから稲刈りまでの一連の稲作の流れを舞で表現します。
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南部裂織
木綿が育ちにくかったため、貴重な布を大切に使うため育まれた技術が、「南部裂織」。着古した着物や布をテープ状に裂いて織りこむことで、衣服や生活用品として再生させることができます。古布を裂いた緯糸は風合いが独特で、組み合わせによって唯一無二の織物が生まれます。
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南部菱刺し
「南部菱刺し」は、風を通す麻布の織目に、保温と補強のために規則的に麻糸を刺し施した生活の知恵。数百種類もの模様が生まれています。
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