日曜朝のお楽しみ、八戸市の「館鼻岸壁朝市」を徹底解説。効率よく回るポイントと、おすすめの朝ごはん。

日本三大朝市といえば、千葉県の「勝浦朝市」に、岐阜県飛騨高山の「高山朝市」、石川県の「輪島朝市」。そんな、三大朝市にも決して引けを取らないのが、青森県八戸市の「館鼻岸壁朝市」。毎週日曜朝のお楽しみです。

もともとは陸奥湊駅周辺で開催されていましたが、2003年頃に館鼻岸壁へお引越ししました。魚介類や野菜などの生鮮食品から、パンに惣菜、麺、スイーツ、花、金物などなど……館鼻漁港を舞台に、全長800メートルにわたって300以上の店舗がひしめく、国内最大規模の朝市です。

今回は、地元常連客である「八戸さんぽマイスター」が案内する「館鼻岸壁朝市攻略大作戦コース」というサービスがあると聞き、参加させてもらうことにしました。

「八戸さんぽマイスター」のみゅーらさん。朝市にはプライベートでも毎週のように訪れるという。首から下げたスピーカーで案内してくれる。

地元住民の筆者もよく朝市に行くのですが、知らなかったこともいろいろ教えてもらうことができました。基本的な情報から、効率よく回るポイント、おすすめのお店までご紹介します!

「館鼻岸壁朝市まちあるき」のご予約はこちらから

「八戸館鼻岸壁朝市」は、いつ開催? アクセスは?

朝市が開催されるのは、毎年3月中旬から12月末までの毎週日曜。ゴールデンウィークやお盆などの祝日には、臨時開催されることもあります。

時間は日の出から9時頃まで。早いお店で、朝2時頃から出店の準備をはじめるとの噂も。雨天決行ですが、出店数が減る場合があるほか、荒天のときには中止になることもあります。

また、日の出から開催していますが、8時頃からは片付けをはじめるお店も増えるので、お目当ての品がある場合は売り切れてしまう前に行く必要があります。みゅーらさんのおすすめは、朝6時くらい。「7時くらいから混み合うのですが、6時ならまだ売り切れも少ないです」とのこと。朝市には、できるだけ早起きして臨みましょう!

中心街からのアクセスは、バスの場合、 日曜朝市循環バス「いさば号」に乗車して「館鼻漁港前」で下車 するのが便利。
電車の場合、JR八戸線陸奥湊駅から徒歩10分。
車の場合は、カーナビで「八戸市新湊三丁目」または「漁港ストア」と検索。駐車場は約500台分、停められるスペースがあります。道路の案内表示に従って向かいます。

<漁港ストア>前の入り口から入場しぐるりと一周!

今回の「館鼻岸壁朝市攻略大作戦コース」の待ち合わせは朝6時30分、<漁港ストア>前。<漁港ストア>は、館鼻漁港に面して建つ、黄色い外観の飲食店です。

位置関係がわかりやすいように、ざっくりとした朝市のマップをつくってみました。

現在、朝市の入り口は3カ所ありますが、<漁港ストア>近くの入り口からスタートし、ピンク色の矢印のようなルートを通ると、効率よく回れるのだそう。

「バス停の近くにあるのがメインの入り口なんだろうけど、そこからスタートするとどう回ったらいいかわかりにくいと思う」とみゅーらさん。

また、「一周してから買おうと思っても売り切れることがあるから、気になるものがあったらその場で買うように」との助言をいただきました。そういえば、いくつかのお店を比較して買おうと思っていたら、戻ったときには売り切れていた……なんてことがありました。朝市で大事なのは思い切り!

それでは<漁港ストア>近くの入り口から、行ってみましょう!

新型コロナウイルスの感染予防対策として、入り口ではアルコール消毒と検温を行っている。

行列のできるグルメ店は?

朝市といえば、行列ができるほどの人気店がたくさんあります。

入り口すぐ横にある<大村きのこ園>。大ぶりの生しいたけを一皿500円で販売しています。みゅーらさんによると、岩手県洋野町から来ている<大村きのこ園>は朝6時頃に出店をはじめることが多いそうですが、1時間以内には売り切れてしまうとのこと。生しいたけが売り切れると、干ししいたけを販売するようです。

7時過ぎにしか朝市へ行ったことのなかった筆者は、たしかに生しいたけを販売しているところを見たことがなかったかも……。

寒い時期は早い時間から売り切れ続出、<新鍋亭>の汁物。大きな寸胴鍋がずらりと並ぶ光景は圧巻です。
八戸名物のせんべい汁をはじめ、パイカ鍋や馬肉鍋、ホルモン鍋、牛すじ鍋など、具だくさんの汁物を提供しています。小サイズで200〜300円、大サイズで400〜500円。一緒に販売しているラーメンも人気。

必ずといっていいほど大行列ができている<大安食堂>のしおてば(1本80円)。以前、並んでいたら直前で売り切れてしまった苦い経験があります……。
実は会場の近くに店舗があるので、行列に並ばずに購入したい場合はそちらを狙ってみるのも手。

<点心工房>の十和田焼き小籠包(6個570円)。十和田ガーリックポークや青森シャモロックといった地元の食材を使い、十和田産の米粉で包んだ焼き小籠包です。中からアツアツの汁が飛び出すので、箸などで軽く穴を開けてから食べるのがおすすめ。

市内の小中野地区にある手作りパンの店<アンジェリーナ>のパン や、

城下地区にある<yummy’s>のクロワッサン など、パン屋さんは根強い人気です。

この日は秋田の名物である「きりたんぽ」のお店にも行列ができていました。「なぜこんなに行列ができるのでしょう。正解は、焼くのに時間がかかるからです!」とみゅーらさん。大音量のスピーカーでの、なぞのクイズ形式(笑)。

食べ歩きにおすすめのローカルグルメ。

座席を用意しているお店もあるので、汁物などは座って食べるのもいいですが、朝市の醍醐味といえば、ローカルグルメの食べ歩きなのです。マナーを守りつつ楽しみましょう。

五戸町のりんご農園<浦屋敷農園>の手作りアップルパイ(1個350円)は、みゅーらさんも毎回購入するというイチオシグルメ。農園で栽培した紅玉を使ってアップルパイにしているそう。紅玉は酸味が強めの品種なのですが、酸味と甘みのバランスがよく、筆者の子どももすごい勢いで食べました。プレーンとシナモンがあります。店舗は<漁港ストア>の入り口近く。

朝市の名物になっている、<赤いテントのコーヒー店>の幼虫グミ。
「お孫さんのために作ったのを、お店に並べてみたらウケたんだって。お客さんに案内するときは『来週また来れば蝶々になってますよ』って言ってます」と話すみゅーらさん。次の週もちゃんと幼虫グミでしたのでご安心を(?)

<石川商店>の焼き魚(300〜600円)。イカやサバ、カラスガレイなどの海鮮を、軽トラの荷台で炉端焼きにしています。割り箸に刺してあるので、食べ歩きに便利。

六ヶ所村<秋月堂>の春巻きりんご(300円)は、ふじりんごとカスタードを春巻きに仕立てたホットスイーツ。最近、朝市に登場しました。外はサクッとパリパリで、中からりんごのカスタードがトロ〜リ。アツアツのうちにぜひ。

岩手県の沿岸部、大船渡からやってくる<元祖かき小屋>では、蒸し牡蠣(1皿4個1,000円)を販売。

丸もちを串に刺して焼いた「串もち」ははちのへエリアのローカルグルメ。甘じょっぱいみそがたっぷり塗られ、ほんのり焦げ目が。くしもち100円。田楽もあります。

<マルカネ>のさばカラ(220円)。イギリスのフィッシュアンドチップスをイメージして開発された商品で、下味をつけたサバに炭酸水でといた唐揚げ粉をまとわせて揚げているそう。外はカラッと、中はフワッとした食感に仕上がっています。

朝市の名物、イカドンに“日本一朝早く会えるアイドル”、場内アナウンス。

朝市を盛り上げるのは、お店だけではありません。朝市“黙認”ゆるキャラのイカドンファミリーをはじめ、着ぐるみのキャラクターたちがいることも。

2019年に撮影したイカドン。
2015年頃に撮影したイカドンママ。<喫茶ピーマン>の店の裏手では、ライブを開催している。

バス停近くの入り口付近では、“日本一朝早く会えるアイドル”のライブイベントも。

ライブのときには人だかりができる。

また、つい笑ってしまうような場内アナウンスが名物になっています。
例えば……

「何種類かパンを買ったお客さん、いちごも買ったそうです。いちごを入れるのを忘れたそうです。自分だと思うお客さん、◯◯まで取りに行ってください」

「さっきトマトを買ったお客さん、お金は払って、商品は受け取らなかったそうです。心当たりのある方は◯◯まで行ってください。もう売るのがないので早く帰りたいそうです」

「車の鍵をなくしたそうです。鍵がないと帰れなくて困っています。周りを見てください」

といった具合。通常の場内アナウンスってなんとなく聞き流してしまいがちですが、日常会話のような飾り気のないワードチョイスに、立ち止まって聞き入ってしまうような魅力があるのです。

いつも、どんな人がアナウンスしているのだろうと考えていましたが、この日は「八戸さんぽマイスター」と一緒だったこともあり、紹介してもらえました。

ダブルピースしているこの方、上村昭子(うえむら あきこ)さん。

朝市が館鼻岸壁に移転して以来、かれこれ18年にわたり場内アナウンスを担当されています。神奈川の川崎出身の昭子さんは、訛りがないためアナウンスが聞き取りやすいだろうと、抜擢されたそう。

「八戸に来たばっかりの頃は、みんな訛ってて何を言ってるかわからなかったんだけど、40年いたらわかるようになったよ。川崎で働いていたときに職場結婚してさ、夫に騙されて八戸に来たの。結婚は騙し合いよ!」と、格言(?)をいただきました。

そんな昭子さんに、放送のとき心がけていることを聞いてみると……

「放送のコツをどこかで勉強したわけじゃないからさ。お店の人が『この商品を入れるの忘れたんだよ』って言いにきたら、わかりやすいようにそのまま伝える。どうしても、こういう放送って、聞いても他人事のようになっちゃうでしょ。だから誰が聞いても『自分かな』って思うような言い方をしてるの」

買い物中でも聞き入ってしまうように計算されていたんですね、すごい!
……と、そんなときにちょうどよく落とし物が届きました。

「こういうのはなかなか取りにこないんだよね〜」と言いながら受け取る昭子さん。

「ハンカチが事務所に届いています。ピンクのチューリップがついたクリーム色のハンカチです。コロナ禍でハンカチは大切です、今一度ハンカチを確認してみてください」と放送していました。

「コロナ禍でハンカチが大切」だというフレーズは、「言いながら思いついたから言った」とのこと。アナウンスはひらめきで成り立っていました。

日曜の朝は八戸館鼻岸壁朝市へ行こう!

さて、ここまで八戸の館鼻岸壁朝市の魅力を存分にお伝えしました。
文章が長くなりすぎて基本的な情報を忘れてしまった方のために、効率よく回るためのポイントをまとめます。

さて、今週の日曜は早起きして朝市へ行きましょう!

八戸さんぽマイスター
https://visithachinohe.com/experience/sanpomeister/

| Written by  栗本千尋 Chihiro Kurimoto

1986年生まれ。青森県八戸市出身・在住(だけど実家は仙台に引っ越しました)。3人兄弟の真ん中、2人の男児の母。旅行会社、編集プロダクション、映像制作会社の営業事務を経て2011年に独立し、フリーライター/エディターに。2020年8月に地元・八戸へUターン。八戸中心商店街の情報発信サイト『はちまち』編集長に就任。主な執筆媒体は、講談社『FRaU』、マガジンハウス『BRUTUS』『Hanako』『コロカル』、Yahoo!『Yahoo! SDGs』etc…
Twitter : https://twitter.com/chihirokurimoto
note: https://note.mu/chihirokurimoto

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