スケートやアイスホッケーなどの氷上スポーツのメッカとして知られる、“氷都”八戸。そのシンボルともいえる存在が、2019年9月にオープンした屋内スケートリンク〈YSアリーナ八戸〉です。実はこの施設、スケートリンクとしてだけではなく、さまざまな使い方ができるんだとか……! そんな〈YSアリーナ八戸〉を徹底解剖します。
〈YSアリーナ八戸〉とは?
体育館、市民プール、アイスホッケーリンク、野球場、武道館、相撲場、弓道場などが集まる運動公園〈長根公園〉内に、2019年にオープンした屋内スケート場〈YSアリーナ八戸〉。中心街から徒歩10分程度、本八戸駅から徒歩約20分、バス停「桜木町」から徒歩約1分と、アクセスの便利な立地です。
この場所は藩政時代からため池として整備されていて、冬になると天然リンクができていました。1930(昭和5)年には『第1回全日本スピードスケート選手権大会』が開催されたという記録が残っており、1950年には天然氷の400mリンクを整備。1969年に〈八戸市長根公園パイピングスケートリンク〉として、人工氷の屋外スケートリンクが竣工しました。
「長根リンク」の愛称で市民に親しまれてきましたが、屋外リンクは12〜3月と冬場しか営業できず、その日の天候次第のため大会運営に支障をきたしていたこと、また、老朽化も進んでいたことから、安定して楽しめる施設を求める機運が高まり、屋内スケート場が誕生しました。これにより、屋外のスピードスケートリンクは2019年2月末で廃止されましたが、中地(なかち)にある市民プールは営業しています。
〈YSアリーナ八戸〉の名前は、地元企業である株式会社吉田産業とネーミングライツ契約されたものです。
八戸市内の屋内スケートリンクは他にも、新井田の〈テクノルアイスパーク八戸〉と、羽生結弦さんが2022年にアイスショーを行ったことで脚光を浴びた〈FLAT HACHINOHE〉があります。
〈テクノルアイスパーク八戸〉はアイスホッケー、フィギュア、ショートトラックに対応し、〈FLAT HACHINOHE〉はさらにカーリングなどの競技が行われます。
その一方で、〈YSアリーナ八戸〉でできる競技は、スピードスケートやパシュートなど。北海道の〈明治北海道十勝オーバル〉、1998年長野冬季オリンピックのスピードスケート会場〈エムウェーブ〉に続く国内3例目となる、世界水準の屋内400mダブルトラックのスピードスケートリンクです。日本女子選手で初めてスピードスケートの金メダリストに輝いた小平奈緒選手や、北京オリンピックのパシュートで銀メダルを獲得した高木美帆・高木菜那・佐藤綾乃選手もすべったことがあるそう。
スケートリンクとして利用できるのは7月下旬〜3月上旬(7~9月は競技者向け営業)。4〜6月の3ヵ月間は氷を張らず、展示会やコンサート、コンベンションなどを開催できるスペースになります。
今回は、そんな〈YSアリーナ八戸〉の楽しみ方をご紹介します!
①スケートする
〈YSアリーナ八戸〉の楽しみ方、まずは当然、スケートです! 一度も行ったことがないと、「どうやって利用したらいいのだろう」と不安になりますよね。ここではわかりやすいように説明いたします。
2階へ向かって、券売機でチケットを購入。
一般・大学生で700円、高校生430円、中学生300円、小学生以下180円。スケート靴を持っていない人は、貸スケート靴300円を追加で支払います。お得な回数券、シーズン券も販売しています。
貸スケートの種類と靴のサイズは、フィギュア16〜30cm、ホッケー18〜30cm、ハーフ18〜28cm、スピード18〜28cmがあります。近くにベンチが設置されているので、試し履きをしてぴったりなサイズを探しましょう。
ひじあて、ひざあて、ヘルメットは無料で貸し出しているので、小さなお子さんや初心者でも安心。
服装は、長袖、長ズボン、ニット帽などの帽子、手袋の着用が義務づけられています(ヘルメットをかぶる場合は帽子なしでOK)。
手袋を忘れた人は、カフェの〈ECHOES〉で100円にて販売していますので、購入を。
スケートリンクへは、1階から地下の通路を通って向かいます。……が、リンク内にはトイレがないので、1階で済ませておくと◎。
準備ができたら、レッツスケート!
筆者も家族でスケート体験をさせてもらったのですが、〈YSアリーナ八戸〉のリンクは寒くない……!? これまで、スケートをしていると足元から冷えてきて、スケート靴を履いた足先がカチコチになるイメージだったのですが、全然そんなことないのです。
館内を案内してくださった、八戸市まちづくり文化スポーツ部の藤谷一徳さんに疑問を投げかけたところ、氷自体はマイナス7℃ですが、観客席や中地は12℃前後に設定されているのだそう。
「オレンジのダクト横に小さい穴が無数に開いているのですが、温度調整した空気が観客席へ向かうようになっています」
また、天井のアルミ膜は厚さ0.2mmですが、日光の輻射熱を遮断する役割があるとのこと。
氷の厚さは3cmと、想像していたよりも薄め。不純物を極力取り除いた純水を使用し、二酸化炭素の気化熱により冷却します。0コンマ何秒というタイムを競うため、すべりやすい氷づくりを心がけているそうです。
②中地でスポーツ
〈YSアリーナ八戸〉では、スピードスケートリンクの中地が運動場として活用されています。
「一般滑走しつつ、多目的に他のスポーツも楽しんでもらえることをコンセプトにしているので、人工芝コートではフットサルなど、多目的コートではバスケットボールやバレーボール、バトントワリングの練習などでも利用していただいています」と、藤谷さん。
先述のとおり中地は12℃前後に設定されているので、運動している人にとっては意外とちょうどいいようです。
人工芝コートは、1時間あたり半面5,000円、全面10,000円(入場料を徴収するイベント利用の場合は30,000円)。多目的コートは、1時間あたり半面650円、全面1,300円(入場料を徴収するイベント利用の場合は3,900円)で利用できます。
利用を希望する場合は、受付に問い合わせを。
③トレーニング室での筋トレ、有酸素運動
競技者トレーニングに対応した本格的なトレーニング室を完備。ベンチプレスやダンベルで体力に合った負荷をかけたトレーニングや、エアロバイクでの有酸素運動もできます。
トレーニング室の利用料は一般・大学生300円、高校生150円。
④ランニング走路でジョギング、ウォーキング
スピードスケートリンクの外周にあるのが、ランニング走路。1周約460mで、ジョギングやウォーキングできます。
ランニング走路のみの利用ももちろんOKですが、トレーニング室の利用料込みでも同額です。
⑤会議室でリモートワークやオンライン会議
〈YSアリーナ八戸〉には小会議室が10室、中会議室が2室、大会議室が1室あります。10人前後収容できる小会議室なら1時間あたりなんと250円(土日は300円)! もちろんFree Wi-Fiも完備。
対面での会議や打ち合わせはもちろんですが、リモートワークに集中したいときやオンライン会議などでも使えそう。これはめちゃくちゃいい〜!
⑥多目的室でダンスや縄跳びの練習
100人程度を収容できる多目的室は、会議や研修、講演会の会場として利用できます。実は大きな鏡が備え付けとなっているので、フォームを確認しながらダンスや縄跳びの練習などもできます。
多目的室は1時間1,100円(土日は1,320円)で借りることができます。
⑦ホワイエ・交流サロン・観戦ロビーでリモートワークや勉強
2階から3階にはフリースペースがあります。テーブルとイスが設置され、Free Wi-Fiも通っているので、リモートワークや勉強、井戸端会議など、自由に過ごすことができます。入場料などはかからず、出入り自由。これは最高では……?
2階の大空間は「ホワイエ」。港町らしくイカ釣り漁船の集魚灯をイメージした照明が下がっています。
2階から3階をつなぐようにして設置された「交流サロン」。段差によって緩やかに空間を区切っています。
大きなガラス窓からリンクを見下ろすことができる、3階の「観戦ロビー」。テーブル席で勉強する学生の姿もありました。
木のぬくもりを感じられる空間。秋田県産のスギ材を青森県内で製材し、壁に使用しているそう。
⑧カフェで軽食やドリンク
スポーツや仕事、勉強をして小腹がすいたら、施設内にあるカフェで休憩を。
〈カフェブランチ長根 ECHOES(エコーズ)〉では、カレーやパスタ、ピザなどのフードメニューが620円〜。東京の『神田カレーグランプリ』でグランプリ受賞歴のある〈お茶の水、大勝軒〉の「大勝軒カレー」は830円。
ベーグルはプレーンやブルーベリー、シナモンレーズンなどフレーバーが6種類あり、260円〜。
アラカルトとしてチュリトス(350円)やプレッツェル(350円)、フランクフルト(250円)、チーズドック(150円)、ポップコーン(250円)などもあります。
ドリンクは「厳選ブレンドコーヒー」(M280円)や「カフェラテ」(M330円)、「カフェクリームモカ」(M500円)などのカフェメニューに、ソフトドリンク(Mサイズ各220円)、「クリームソーダ」(M390円)など。
各種ソフトクリームもあります。
リモートワークのおともにも。
⑨キッズスペースで子どもを遊ばせる
2階「ホワイエ」にはキッズスペースがあります。
大きな窓際に設置されたキッズスペース。「ハイハイ」レベルの小さなお子さんを安全に遊ばせることもできます。
職員の方が〈八戸市みなと体験学習館〉の『BOOK SWAP HACHINOHE』の取り組みで譲り受けてきたという絵本が並んでいました。絵本の読み聞かせもできますね。
もちろん、授乳室やオムツ交換台もあります。
⑩イルミネーションを楽しむ
冬季期間中、駐車場の出入り口付近ではイルミネーションを実施。撮影に訪れるカップルもいました。
年中〈YSアリーナ八戸〉を使い尽くそう!
冬のイメージがあるスケートですが、〈YSアリーナ八戸〉では7月下旬から3月上旬(7~9月は競技者向け営業)までできるうえに、スケートではない用途では年中利用できます。
八戸市民だけでなく、帰省した人、旅行や出張で訪れた人ももちろん利用可能。「中心街にホテルをとっているけれど、時間つぶしに何かしたい……」という人にもおすすめのスポットです。
| Written by 栗本千尋 Chihiro Kurimoto
1986年生まれ。青森県八戸市出身・在住(だけど実家は仙台に引っ越しました)。3人兄弟の真ん中、3人の男児の母。旅行会社、編集プロダクション、映像制作会社の営業事務を経て2011年に独立し、フリーライター/エディターに。2020年8月に地元・八戸へUターン。八戸中心商店街の情報発信サイト『はちまち』編集長に就任。主な執筆媒体は、講談社『FRaU』、マガジンハウス『BRUTUS』『Hanako』『コロカル』、Yahoo!『Yahoo! JAPAN SDGs』etc…
Twitter:@chihirokurimoto note:@chihirokurimoto